旅作家やドローンアーティスト等幅広く活動するとまこさん

商店街の活性化、古民家の活用、SNS等による情報発信ほか

  • 香川

香川県 観音寺市 地域おこし協力隊 現役隊員(任期:2020年4月~)
とまこさん

旅作家兼ドローンアーティストとして活躍し、観音寺へ

学生時代からバックパッカーとして世界を回り、卒業後は旅行会社に就職して秘境ツアーのコンダクターに。やがて「旅の本を書きたい」と退職し、以降は旅作家として活躍してきたとまこさん。訪れた国は56カ国に上り、テレビやラジオなどのメディアにもしばしば登場している。

「2017年頃にドローンと離島の魅力にハマってしまい、気がつけば多くの時間を島で過ごしていました。朝焼け前から夕焼け後まで、ひたすらドローンで空撮をする日々を送り、旅作家に加えてドローンアーティストとしても活動しています。2020年に広島県の倉橋島をPRする仕事をした際に、観光コンサルタントをしている知人から、『香川県でもドローン撮影をしてくれないか』という相談を受けました。」

当初は倉橋島と同様に単発のドローン撮影の仕事として引き受けたが、観音寺市に拠点を置いて、地域おこし協力隊として活動してみないかというオファーを受ける。

「地域おこし協力隊のことは知らなかったのですが、これまで経験してきた観光大使などとはまったく違う仕事でしたし、それも面白いかなと思いました。特定の地域の魅力をより深く探ることができて、貴重な体験になると思いました。」

とまこさんは2020年4月、観音寺市に地域おこし協力隊として着任。東京での仕事もあり、時々横浜市の自宅に戻りながら活動することになるが、住民票も異動させて観音寺市にやって来た。

「天空の鳥居」として知られる市内の名所・高屋神社

世界に誇れる夕陽の美しさを発信しようと決意

地域おこし協力隊としての活動をスタートしたとまこさんが最初に目を奪われたのは、海に沈む夕陽の美しさだったという。

「以前から夕焼けをテーマにした本を書いていて、世界中の夕陽を追いかけていました。そんな私が観音寺の有明浜の夕陽を見て、衝撃を受けました。海面が完璧な鏡面となり、まるでウユニ塩湖のようでした。水平な海の染まり方がとても特徴的で、空が均一に赤くなり、それがそのまま海に反射して、まるで世界中が赤く染まるような感じです。海に浮かぶ、伊吹島という離島も非常にいいポイントです。そんな素晴らしい絶景を目にして、これは世界に誇れる風景だと確信しました。」

波が比較的穏やかな瀬戸内海にあって、観音寺市はほぼ中央に位置するため、ひと際海面が静かなことで知られる。しかも、西向きの海岸を有することが地理的な特徴だ。

「夕景の美しい観音寺は、きっと世界でも特別な場所だと気づき、まずはその素晴らしさを発信していきたいと思いました。」

とまこさんは観音寺の魅力を紹介するために「kanlove letter」という紙媒体を発行して配布を開始した。手作り新聞のようなスタイルだ。

「写真や文章、レイアウトなど私がひとりで制作を手がけています。それと並行して、Instagramで『観音寺イーツ』というタイトルの地元のグルメガイドを発信しています。こちらは地元の人向けに飲食店を紹介するもので、コロナ禍で打撃を受けた市内の飲食店を活性化しようと始めました。」

左)古民家の中でドローンで動画を撮影中の様子 右)地元の仲間が開催したイベントでの打ち上げ

国際芸術祭に合わせて、古民家を活用したい

もうひとつ、古民家を活用したプロジェクトの構想もある。

「人が集まるイベントを古民家で開催したいと考えています。現時点ではコロナ禍での制約もありますが、いずれはインバウンドの人の流れも戻ってくるはずです。そうなってから慌てないように、今から海外に向けて発信すべきだと考えていて、インバウンドで成功している徳島県の祖谷渓と観音寺でコラボできないかと模索しています。地理的にも観音寺と近いですし、アメリカ人の方が古民家を購入したことで祖谷渓がブレイクした経緯もあるので、実現すれば面白いはずです。」

海外の反応を意識しながら、古民家をベースにした魅力的な映像を作って発信したいというとまこさん。2022年の春から秋にかけては、一大イベントである「瀬戸内国際芸術祭」が行われることも追い風だ。

「3年に1度、瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台に開催される現代アートの祭典で、多くの人が集まります。それに合わせて、古民家を活用した発信をしたいと思っています。ここはスペースが広いので、アーティストを招いて創作してもらったり、その模様を動画にするのも面白いと思います。」

とまこさんは観音寺商店街連合会に所属し、商店街の活性化もミッションとなっている。時にはとまこさんのユニークな発想が、地元の商店街の人たちに受け入れられにくい場面もあるそうだ。

「外から来た者の視点で、観音寺の魅力を伝えることが協力隊の使命だと思っています。夕陽の素晴らしさにしても、毎日当たり前に見ている地元の人にはその価値がわかりにくいのかもしれません。商店街の人たちと私の意見が食い違ったりした時は、市役所の担当者の方が仲介してくれるなど、サポートしてくれるので助かっています。」

上)とまこさんを感動させた海と夕景
左)テレビ時代劇『銭形平次』のタイトルバックに使用された「銭形砂絵」 右)観音寺商店街連合会の人たちと

アニメの聖地として人気の観音寺を盛り上げたい

観音寺市は、人気アニメ『結城友奈は勇者である』シリーズの舞台として、知る人ぞ知る場所だ。同作には、伊吹島など市内の数多くの観光スポットが登場する。

「聖地巡礼で、年間を通して同作のファンが数多く訪れています。地域活性化のために、市でも名所を描いたコラボポスターなどを制作していますが、古民家をアニメの登場人物のコスプレをして撮影ができるスタジオとして活用すれば、ファンの人たちも喜んでくれるはず。せっかく盛り上がっているので、うまく実現していきたいです。」

市内の他の地区で活動している地域おこし協力隊とも連携し、撮影を手伝ってもらうことも多いという。観音寺商店街連合会で軽トラックに搭載するソロキャンプ用のテント「can-on Gstye」を開発した時もそうだ。

「軽トラックを簡単にキャンピングカーとして使えるように考えたもので、そのPRをするための動画を撮影した時にも協力してもらいました。こういったことができるのも協力隊のメリットなので、隊員同士で今後も一緒にコラボできたらいいと思っています。」

天空の鳥居として知られる高屋神社、時代劇の名作『銭形平次』のタイトルバックに使用された「銭形砂絵」など、観音寺市には魅力的な場所が豊富にある。

「観音寺の魅力をまだまだ伝えきれていないので、任期終了まで精一杯やりたいです。地域おこし協力隊になって感じるのは、自分で考えたことをどんどん実現できる仕事だということ。それが最大の魅力です。地域おこしという目的が明確だし、自分で企画して実際に運営して最後までやり遂げられるのだから、面白くないわけがありません。だから、どんどんチャレンジしてほしいです。」

観音寺商店街連合会では、軽トラックに搭載するソロキャンプ用のテント「can-on Gstye」を開発した

Profile

香川県 観音寺市 地域おこし協力隊 現役隊員
とまこさん

埼玉県出身。旅行好きが高じて、秘境ツアーコンダクターを経て旅作家に。『離婚して、インド』(幻冬舎文庫)など著書は12冊。2017年からドローン撮影を始め、旅先での美景、絶景の撮影、動画編集を手掛ける。講演、TV・ラジオ番組出演など多方面で活動。2020年4月に観音寺市に地域おこし協力隊として着任。商店街の活性化等に取り組む。